仲野 雅幸先生
震えや不随意運動に対する外科治療とは?
南東北福島病院長代行
日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医
仲野 雅幸 先生
〒960-2102 福島市荒井三丁目1番地の13
TEL.024-593-5100 FAX.024-593-1115
URL http://www.f-str.jp

不随意運動とは?

今回は、不随意運動に対する外科治療を紹介します。不随意運動とは、意のままに(随意)ではなく意に反して(不随意に)体の一部分または全体が勝手に動いてしまう症状を指します。てんかん発作の時に生じる痙攣(けいれん)の動きも不随意的ではありますが、一般的にはこれは含まれず①振戦(しんせん)②ジストニア③ジスキネジア④バリスム⑤舞踏病―などが不随意運動として分類されています。以下①から③までの代表的な病態を解説します。

 

振戦(しんせん)

振戦とは、特に手指が細かく震える状態を指します。例えば力仕事をした後に文字を書こうとすると手が震えてうまく字を書けないということも振戦の一種。緊張して手が震えるというのも生理的な振戦と言えます。病的な振戦は①本態性振戦②パーキンソン病による振戦③他の病気による振戦などに分類されます。

①本態性振戦は、文字を書く時、コップで水を飲もうとする時、茶碗を持つ時、箸でものをつかもうとする時に出現する震え。要するに何か行おうとする際に出てくる振戦です。脳の加齢的な変化が関係しているとされます。内科的治療としてはある種の降圧剤、いわゆる精神安定剤などが用いられます。薬物治療でコントロール困難な場合には、外科治療の適応となります。

②パーキンソン病による振戦は、安静にしていて手を意識しない状態になった時に出現する振戦です。歩行時にも出現します。振戦以外にも体が固くなった感じ、動作緩慢、歩行困難(最初の一歩が出ない、歩いているとだんだん速足になって転んでしまう)、顔の表情が少ない―などの症状を合併したりします。

最初の治療として抗パーキンソン病薬が用いられ、薬がよく効く場合にはそれだけで振戦はコントロールされますが、病状の進行に伴って薬物でのコントロールが困難となっていきます。薬物でのコントロールが困難な場合は、外科治療の対象となってきます。

 

ジストニア

ジストニアとは体の部分、または全体の筋が異常に緊張し、勝手にゆっくりした動きが出てしまう状態を指します。具体例を挙げると、食事など日常生活には支障がないが、例えばピアニストがピアノを弾く時だけ手の震えが出たり指が突っ張ったりしてピアノが弾けなくなる、書家が筆を持って字を書こうとすると震えてうまく字を書けない、画家が同様に絵を描けなくなる―などの状態は昔から「書痙」として知られ、精神的なものとして片づけられていた感が否めません。

しかし現在では「局所性ジストニア」とジストニアの一種と考えられるようになり、薬物治療でコントロール困難な時には外科治療の有効性が確立されています。

全身的なものでは、遺伝性ジストニアという遺伝子異常により生じる病気が知られていますが、こちらは外科治療(脳深部刺激療法=後述)の有効性が確立されています。

頸部と上肢に異常運動が出る場合には、局所より広くて全身より狭いので、分節性ジストニアという診断となりますが、薬物治療が奏功しない場合には外科治療を行う価値はあります。

 

ジスキネジア

聞きなれない名前ですがうまい日本語訳がありません。もっとも多いのがパーキンソン病の方が薬物治療を受けて数年経つと出現してくる病態です。パーキンソン病は、薬物でドーパミンというホルモンを補うと震えが止まり、体の動きもよくなりますが、治療を開始して数年経つと、薬の服用後に、薬が効きすぎるような状態になり、勝手に体が動いてしまう状態が出てくるようになります。この病態がジスキネジアで、現在のパーキンソン病治療の問題点の一つです。このような場合には、脳深部刺激療法で症状の改善が期待できます。

 

不随意運動に対する外科治療

古くから振戦に対する外科治療は、凝固術という方法で行われてきました。脳の深部には神経細胞の密集しているところがあり、大脳基底核や視床と呼ばれていますが、これらの一部を電気で凝固(焼灼)して、振戦などの症状を改善させる手術が日本では1950年代から行われてきました。このような手術を凝固術といいます。

もう一つの脳深部刺激療法(DBS)は、脳の深部に電極を埋め込んで電気刺激することで凝固と同じ効果を出す方法です。凝固は1回限りの手術で、その後の症状の変化に対応できないという問題点がありましたが、この方法は効果が低下しても電圧などを調節することで効果を維持することが可能です。症状の変化に対応していくことができるわけです。

しかし電極やリード線、刺激装置を体内に植え込まないといけないので、凝固術に比べると大がかりとなります。いずれにしても、それぞれの患者さんに合わせて手術法を選び、治療を進めていくことが大事です。不随意運動でお困りの方は、脳神経外科・神経内科などの専門医にご相談ください。

 

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